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熊本家庭裁判所 昭和52年(家)1439号 審判

申立人 山本ミエ子(仮名)

相手方 山本良人(仮名)

主文

一  相手方は申立人に対し、昭和五三年二月以降本件審判終了に至るまでの間、毎月金八万円宛を当該月の翌月一〇日かぎりいずれも当裁判所に寄託して支払え。

二  相手方は申立人に対し、金六万一、八〇〇円を即時当裁判所に寄託して支払え。

理由

申立人(妻)と相手方(夫)とは現に婚姻関係にあり、その間には長男(一七歳、高校二年生)、弐男(一五歳、高校一年生)および参男(一二歳、小学校六年生)の三子がある。相手方は、昭和五二年六月以来申立人ら家族と別居状態にあるが、その間弐男の修学旅行費七万円および参男の卒業記念品代六、〇〇〇円を支給したほか、その余の婚姻費用分担を拒否している。相手方が右費用分担を拒否する最大の理由は、申立人との間の確執であり、任意の履行は期待できない険悪な状態にある。

申立人は現在○○店の店員として稼働し、毎月四万円ないし六万円程度の収入で母子四人の生計を維持しているが、右収入のみではとうてい無理であり、親族などから生活費として借りうけた借入金はすでに合計約五九万円に達しているのみならず、長男、弐男の高校納入金(昭和五二年一〇月から昭和五三年一月までの分)二万一、六〇〇円、参男のクラブ納入金(昭和五二年一〇月から昭和五三年一月までの分)二、〇〇〇円、申立人の国民年金掛金六か月分一万三、二〇〇円、固定資産税二万五、〇〇〇円以上合計六万一、八〇〇円が未だ納入できず、その他米代や電気代などの未払金四万三、〇一二円も抱えているが、特に前記六万一、八〇〇円の未納金は早急に支払うべき必要に迫られている。

相手方は○○○○運転手として稼働し、月平均少なくとも一四万円以上の収入を得ている(尤も、昭和五三年二月中は入院加療を余儀なくされているが、その間は傷病手当が支給される予定である。)

以上のような諸事情を考慮すれば、申立人ら母子四人の生活および三人の子供の教育を保持するため、審判前の臨時に必要な処分をする緊急性が認められるから、扶養義務者である相手方に対し、本件婚姻費用分担金として、さしあたり昭和五三年二月以降本件審判が終了するまでの間毎月金八万円あての金員と特に早急に支払いを要する前記未納金六万一、八〇〇円の各支払いを命ずることとし、主文のとおり審判する。

(家事審判官 松村利智)

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